「イベント産業の特性」への論考 3(結)
イベントの産業特性は、製造産業ともサービス産業とも基本的に異なるだろう。これらの産業が社会のインフラストラクチャーを形成し、日々の生活を支える骨格や動脈であるとすれば、イベント産業は、骨格や動脈に力を与え、活性化させる、いわば「ビタミン」としての社会的価値、経済的価値をもつと言えるのではないだろうか。経済のソフト化、産業構造の転換が叫ばれて久しい。マクロの産業分類でいえば、工業からサービス業への移行であろうが、現場レベルでみれば、人の生産性が問われる時代である。人間の智恵、人間の発想、人間の行動力が資源となる。そして新たな時代を作るためには新たな人に会わなくてはならない。名刺が入れ替わらなくてなならない。21世紀の産業を作るということは、人間がそのようにして働く状況を作ることに他ならない。社会全体に及ぶ大きな構造改革にあって、改めて問われるのは、組織や人材の体質改善である。そのうえで、「人の心に強く働きかける」力により「集団の創造活動」を促し、様々な経済活動を活性化させる「シード(種)」を生み出すイベントの「ビタミン」としての役割は極めて大きいと思われる。
そうしたイベントの21世紀における社会的な役割を、特に3つの観点から整理する。
1 イベントによるネットワーキング
旧来からの組織と組織の関係、あるいは組織と人間との関係を改革し、新たな組織・集団のつながり、組織・集団における個々の人間の役割や帰属意識を自らの力で生み出すことが21世紀創造の大きな課題である。この課題を実践する方策として、イベントは格好のステージとなる。イベントは新たな出会いをつくるネットワーキングの実践であり、人はイベントへの参加を通して、ネットワークを広げ、マネジメントの領域を自ら拡大することができる。
2 イベントによるクリエーション
イベントには様々なクリエータが参加するとともに、集団的な創造活動を実践する場である。イベントは美術、映像、音楽、舞台など、様々な表現活動の統合であり、お互いのクリエータが相互に刺激しあい、切磋琢磨する場でもある。またイベントの来場者にとっても、最新の創造活動の現場を体験・評価する格好の機会となる。こうしたイベント体験の蓄積は、いま大きく問われている我が国の「創造性」を高めるうえで重要な意味を持つだろう。また、そうして開催されたイベントは、我が国の世界に向けたクリエビリティのショーケースともなるだろう。
3 イベントによるナレッジマネジメント
イベントは、それ自体が完結したプロジェクトであり、しかも計画どおりにいかない未知の部分を常に孕んでいる。イベントは規定だれない開かれた未来であり、それを成功に導くには戦略的なかつ、多様な「知の交流」が求められる。そこで蓄積されたノウハウは、イベント後の社会活性に大きく寄与する。地域イベントを通した地域ブランドの創造、展示会でつかんだ新商品開発のヒントなど、イベントによるナレッジマネジメントは、参加者の内に蓄積され、活力の源泉となる。
即ちイベントは、21世紀の我が国の構造改革を現場レベルで促進し、内在する人の可能性を触発し、新たな社会システムと創造性に富んだ商品・サービスを生み出す揺り篭としての可能性もつ。

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