2004/06/14

「イベント産業の特性」への論考 1

 「イベント産業の特性」について、ある程度まとまった論考を行う機会を得た。こうした問題を取り扱ったものはこれまであまりなかったのではないかと思っている。その論考をベースに、何回かに分けて考えているところを示すことにする。
 イベントを規定する基本的な要件として、イベントは限られた「時間・空間」において成立する一過性のものであり、基本的にコピーや大量生産は行えないことをあげる。またスポーツや文化イベントでは「収益事業=興行」として成立しているものもあるが、多くのイベントは「収益事業」ではない点にも着目する。
 必ずしも収益を前提にしないことと一過性はイベント産業の固有な特性を規定するものという条件を、この論考の出発点とした。なぜなら、旧来からの産業への理解からは、「イベント産業の特性」を掴み得ないと考えたからだ。
 「産業」というものが、技術の標準化により商品やサービスの経済的価値を高め、大量生産・販売することで事業収益の拡大を目指すものであるとすれば、必ずしも収益を前提とはしない「イベント」を商品とする「イベント産業」は基本的に異なるものと言わざるを得ない。
 また企業にとってイベントはPR活動の一部であるが、テレビや新聞、雑誌などのマスメディアとは基本的に異なる。マスメディアについては時間や紙面が市場化され、売買の対象となっているが、イベントはそれぞれが固有であり、広く市場化されるものではない。展示会に限定すれば、「小間」が売り買いされるが、流通はしない。
サービス産業で見れば、観光やコンベンションはイベントと重なる領域ではあるが、観光やコンベンションは、共にホテルや展示会場など、施設を活動と収益の基盤としている。施設型産業は施設への設備投資と、継続的な運営による回収を基本としており、収益事業としての形態は明確である。
 ではイベントは「経済活動」として、どのような意味をもっているのか、「経済活動」という観点からイベントを見なおしてみよう。「収益」という視点からイベントを分析すると基本的には以下の3つに大別されよう。
1 収益事業としての展開
展覧会やコンサート、プロスポーツが代表的な存在である。しかし現実には、イベント単体で十分な収益を維持するケースはほとんど見られない。特にコンサートやプロスポーツは、テレビ放映や、CDなど、メディアとの連携により事業収益を確保しており、イベントはメディアという流通に提供する「商品開発」であり、メディア事業の「PR手段」である。収益事業の観点からすれば、イベントに問われるのは、「商品開発」「PR手段」としての投資価値であり、投資の回収は主にイベント以外で行われる。
2 収益向上の手段としての展開
企業の行うイベントは、基本的にはこの領域に属する。イベントそのものはに収益は求めないが、コミュニケーション活動として、事業収益に向けた「投資効果」は厳しく問われる。収益の向上を目的とするわけではないが、投資効果が問われる地域のPRイベントなども、この領域に属すると考えられる。
3 収益を目的としない展開
市民参加型のイベントには、イベントとしての収益を前提にしないケースがある。しかし、それは「イベント事務局」としての収益であり、イベントによる経済波及が重要であるのは言うまでもない。
 以上の整理からして、イベントを経済面からみると、それ自体として(収益事業として開催するとしても)の収益性によって価値が問われるよりも、経済波及効果を発生させる「投資価値」こそが第一に問われるべきものとの考える。しかもこの投資の回収は、投資主体に限定されるのではなく、投資主体・事業主体を超えて大きく広がる。ここにイベント特有の経済特性があるのではないかと考える。